『It’s Only Love That Gets You Through』

2006-2018 anthology of Koji Takeda

ART DIRECTION & DESIGN Sen

2018.6.18

5,000yen

 きっと何度も思い出すだろう。あの日の間違いを。あの日の失敗を。そして、同じく何度も思い返すだろう。なぜ、人は認められたいと思ってしまうのか。なぜ、人は自分が必要とされたい、必要な人だと思われたいのか、と。くだらない、と言いつつ、今日もどこかの誰かが、気になって、スマホの画面を何度ものぞいている。意味なんてない、と言いつつ、自分の行動が、書いたものが、どこかに届き、なにかに響いてほしいと思ってしまう。そんな自分が嫌で仕方がない。そんな自分を見たくない。だけど、一歩外に出れば、いや、いまは外に出なくても、誰もが、そんな自分を、街中に、世の中にばら撒いていることに気づいてしまう。ほら、きみも、ぼくも、同じだよ。

 少しはよくなったのかもしれない。もしかしたら、きみはそんな風に思っているかもしれない。だって、偉そうに、自分を押しつけてきた奴らが、いかに酷いか、晒され、暴かれ、時に裁かれるようになったのだから。そうなるともっと、もっと、探したくならない? どんな作品でも正義が前景化していないとつまらなくなり、そんなカルチャーや言葉ばかりを追いかけてしまう。そのうち、きみも、ぼくもつかまるだろう。なにもしていなくても、ぼくたちが受け入れている日常は、見事にコントロールされ、当たり前に汚れているのだから。あれ、どっちがどっちを裁いていたんだっけ?

 ひとつ、を書きたい。いつも考えている。いろんなことから離れて。初めて、読んだ詩。あの日の夕暮れ、聴いた曲。失ってしまったことに気づいた時の涙。そんな純粋なものが心に残っていることを確かめたい。だけど、そんなものはどこにもないことに書いていると気づいてしまう。誰かを好きになることも、誰かに好きになってもらうことも、結局、傷つけてしまうことなのだから。安易な答えのような言葉が並んでいる。ほんもののような色で塗られた夕暮れが画面いっぱいに広がっている。そして、涙。涙のことを考えていたい。その涙を信じたいけれど、どうしても疑ってしまう。この頬をあたたかく流れていく涙。体の奥から出てきた涙。だけど、どうしても信じることができないんだ。その涙に会いたいのに、疲れてしまっているんだ。

 ひとつ、を書いてきたはずなのに、どれも似ているような気がする。目を閉じてしまいたいけれど、やっぱり見つけてしまう。見えてしまう。そうなると、もう言葉の出番はない。そして、きっとまた何度も思い出すだろう。「ずっと書いていて、まだ完成していなかったんだ」って。

 もっと遠回りしていたい。共感も、頷きもいらない。もちろん、いいね、とか、絶対につけないでね。それでも、やっぱり、ひとりはいや? 誰かに認められたい? どれもきっと正解ではない。明日よりも早く「いま」は更新されてしまうのだから。ぼくだってそうだ。とても都合よくできている。そして、ずっと間違えている。それでも、話をしなくてはいけない。なにかを考えていなくてはいけない。順番を守って、レジに並ばないといけない。

 誰かの視点が必要だって、そんなことをいつも話してはいるけれど、主観も客観もすべては噓でしょ。そう思っているだけの、自己満足でしょ。もう何度も繰り返しているだけの、毎日を生きているんだ、というパフォーマンスでしょ。

 だからこそ、ぼくは思う。学校って大事だ。会社って大事だ。町内会とか、マンションの管理組合とか、やっぱり大事だ。そして、ぼくはそこにちょっとだけ、今までのやり方とはちがう、なにかを書いておきたいんだ。つながりを拒んでしまうけれど、別の回路でつながりをつくれたらと思っているんだ。

『It’s Only Love That Gets You Through』

2006-2018 anthology of Koji Takeda

フリーペーパーなどの媒体に書いてきたものや、歌詞、校歌など、今までの詩集に入らなかった作品を中心にまとめたものです。デザインはSenさんで、それぞれの詩に合った紙を選び、それを包む形の本にしてくれました。残り2冊です。よろしくお願いします。

5,000yen(送料込み)

ご希望の方は kojiwords@yahoo.co.jp まで連絡をお願いします。

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